在宅お役立ち情報

care-eco's magazine

2021/04/13

訪問薬局のススメ

これまでも何度か在宅療養のお薬にまつわるお話をさせて頂きましたが、ご自宅で長く過ごしていくためには、大切なお薬を忘れずにしっかりと飲むことが大事な秘訣の一つです。 
皆さまは、「在宅患者訪問薬剤管理指導」という言葉をご存知でしょうか?
いかにも専門用語で、聞き慣れない方も多いかと思います。
これは簡単に申し上げますと、「薬剤師さんがご自宅に来てくれて、医師が処方した薬を持ってきてくれ、さらに説明もきちんとしてくれる」という贅沢な仕組みです(この仕組みを提供している薬局を通称「訪問薬局」と言っています)。
にも関わらず、在宅医療で医師がご自宅に来ているお宅でも、この仕組みについてはご存じない方も多くおられます。
そこで今回は、「お薬を飲む」ということに関して在宅療養の強い味方である、「訪問薬局」についてご紹介します。

■どんな仕組み?
訪問薬局が入っていない場合は、皆さまもご存じのように、医師から処方が出ると処方箋を受け取って、その処方箋を薬局に持っていきます。そして薬局でお薬を受け取ります。
訪問薬局が入ると、医師からFAXなどで処方の内容が薬局に送られ、薬剤師さんがお薬を持ってご自宅に来てくれます。そして、ご自宅に来た薬剤師さんに処方箋を渡し、お薬と交換します。

■どんな良いことがあるの?
1. 生活に合わせたお薬の飲み方を考えてもらえる!
訪問薬局の一番のメリットがこちらだと思います。ふつうの薬局ではお薬を出してくれますが、そのお薬が実際に飲まれているか、どうやって飲まれているのかまでは知ることができません。しかし薬剤師さんがお家に来てくれる訪問薬局では、実際の状況を確認し、もし飲み忘れや困ったことがある場合には、解決する方法を考えてくれます。
また、必要時にはお薬の変更も主治医に提案してもらえます。

2. お薬のことを気軽にじっくり相談できる!
薬局では他の方も待っていたり、薬剤師さんもお忙しそうにしていたりと、聞きたいことがあってもなかなか聞くことが難しいと思います。そんなお悩みも、ご自宅に来てくれると気にせずに相談することができます。

3. 薬局に取りに行く手間が省ける!
在宅療養をされている方の場合、お薬はご家族が薬局に取りに行く場合がほとんどだと思います。しかし、ご家族もお仕事をされていたり、ご高齢で外出がなかなか大変であったりしますよね。そんな時でもご自宅にお薬を持ってきてもらえるので、とても助かります。

■どんな方が対象になるの?
特に決まりはありませんが、以下に当てはまる方は一度検討されることをお勧めします。

・お一人住まい、認知症の方など、お薬を飲み忘れてしまう方
・お薬の種類が多い方
・色々な病院から色々な種類のお薬が出ている方
・お薬の説明をじっくり聞きたい方
・飲み込みの力が落ちている(嚥下機能障害)方
・がん末期で麻薬などの調整が必要な方
・お薬が取りに行くのが大変な方
・点滴や胃瘻で生活している方

■費用はどれくらいかかるの?
お薬代にプラスして「在宅患者訪問薬剤管理指導料」がかかります。介護保険申請がお済みの方では介護保険、お済みでない方では医療保険が適応されます。
自己負担額は、ご自宅で1割負担の場合、介護保険で月約500円、医療保険で月650円となります。

■どうやってお願いしたらいい?
残念ながらどの薬局でも対応してくれるわけではなく、限られています。インターネットで調べたり、ケアマネさんに聞いて、まずは訪問薬剤管理指導に対応してくれる薬局を探します。事前に対応可能か確認しておくのがベターです。
次に、訪問薬剤管理指導の開始には、かかりつけの先生の指示と処方せんが必要です。
受診の際にかかりつけの医師にご相談してみて下さい。もし難しい場合には、薬局の方から医師にご相談して頂ける場合もあります。
処方箋を受け取ったら、実際に訪問してくれる日時を薬局さんと調整して、訪問となります。
以上、訪問薬局についてご紹介させて頂きました。
私たち医療者にとっても訪問薬局さんが入っているととても助かります。
お薬のことで悩まないためにも、訪問薬局さんを積極的に活用されることをおすすめします。
 

この記事を書いた人:
安間 章裕(アンマ アキヒロ)
日本内科学会認定総合内科専門医・日本感染症学会認定専門医
2010年 浜松医科大学医学部卒業。亀田総合病院総合診療科、感染症科での研鑽を経て、茨城で在宅医療の立ち上げを行う。その後、地元である静岡県で感染症業務、在宅医療に携わっている。